Sleep tight

ステエションズ vo,gt

2020.08.25

天上の蜘蛛を見ていた。軽快に、器用に、細かい足を休み無く動かしていてわたしより歩くのが上手な気がする。わたしは、わたしの知らないわたしを演じていたような気分だった。汗のせいではねた後ろ髪を直す元気も無い。起きてから何も食べていないので当然なのだが時折強烈に感じる空腹と、ムシムシした暑さのせいで少し機嫌が悪いまま横になっている。始まったと思った夏はあっという間に残り僅かになっていて少し切ない。深夜の風呂場で「奴」に遭遇したり、冷房のタイマーが切れた部屋で汗びっしょりの状態で起きた瞬間はこの上なく不快だがそれでも季節の中で夏が一番すきだ。打ち上げ花火は見れなかった、友達と祭りに行くことも旅行をすることも何も無かったけれど、確かに今年も夏だった。無意識下の期待を後ろめたく感じていたじぶんを赦せるようになった。求めることが悪なような気がしていたがそうでは無かった。昼間の三日月、くっきりとした入道雲。君のことをどれくらい愛せるのか。ひとに敬意を持つということ、やさしさとは何かをずっと考えている。夏のせいにしたって何も解決しないことくらい、いまのわたしは知っている。荒れた腕がひりひり痛んで悲しかった。帰り道、別れる度にきちんと目を見て「さようなら」を言いたい。わらいながら君と何ともない話が出来るのはこれが最後かもしれないと、覚悟を持って居たい。夏が終わる。今年もうつくしかったな。