Sleep tight

ステエションズ vo,gt

2022.09.21

ふわっとしているようでしていない、死はいつだっておとなり。

"TOKYO CALLING 2022"の前日。ちゃーりーと電話をしながら重たい機材を引いて梅田を闊歩していた。雨は降っていない。最寄り駅周辺はわたしが駅についた途端に暴風と雨で白く霞んだ。ラッキー、と思ったが家から出た瞬間すべてがおしまいになったひとも居るんだろうな、と思ってちょっとだけ喜ぶのをやめた。台風が来ていることは知っていたがそんなに大型だとは知らなかったわたしは傘だけ持って行っておくか、ぐらいの気持ちでいたのだ。

レンタカーで、下道だけで東京まで行く。わたしは免許を持っていないので世の中の運転ができるひと全員を大尊敬している。一歩間違えれば自分も同乗者も全く関係の無い他人も死なせてしまえる車というものはすごい。怖い。やばい。立派な兵器である。晴れているならまだしも台風が、しかも超大型のものが近づいている夜だ。高速道路ではないが高速道路のような道を走っているとき、ワイパーが全力で稼働しているにも関わらず殆ど前が見えない暴風雨に遭った。久しぶりに鮮やかな生命の危険を感じている傍ら、隣のちゃーりーは涼しい顔で運転を続けている。更に恐怖が加速する。後部座席の虎太朗が速度落とし、と言っているにも関わらず全くスピードが落ちない。今スリップしたら間違いなく死ぬ。明日のライブどうしよう。機材のローンもまだ終わっていない。納期を延ばして貰っている仕事、まだ読めていない本、ずっとずっと集まりたいと言っていたのがやっと叶えられそうな飲み会。すべてが私の頭の中に集結する。巨大な水溜まりの上を隣のトラックが追い越し車線で通過していき、跳ねた水でフロントガラス全てが覆われ視界がゼロになったときは流石に大声を上げた。しかも二回ぐらいあった。死ぬ。本当に死ぬ!当然眠気など来るはずもなく助手席で終始心臓をばくばくさせていたが、どうにか天候が落ち着きワイパーが役目を終えたときやっと安堵することが出来た。本当に怖かった。運転していたちゃーりーが一番怖いとは思うのだけれど。

そんなこんなでわたしたちは14時間ぐらいかけて東京に到着し、下北沢のスタジオでリハーサルを終え、無事に本番のTOKYO CALLINGに出演することが出来たのだ。行きも帰りも車内で一番眠っていたのはわたしだったはずなのだが(行きはともかく帰りは運転手を寝かさない為に起きていようと思っていたのに本当に申し訳なかった)、家に帰ってからとその次の日はほぼほぼ眠って過ごした。生きて帰って来れて本当に良かった。台風が過ぎたあとはそれまであった夏がはじめから存在しなかったかのような涼しさになっていて嬉しい半面すこし寂しい。寒くなってくると思い出す記憶が沢山あることに驚く。それもこれもいま生きているから味わえる感情だ。生きていてよかった!今回は日帰りだったので東京に行った実感がほぼ無いのだが、行ってみたい喫茶店や居酒屋を密かにメモしているので年内にいくつか行けたらいいなと思う。皆さんも運転には充分に気を付けて。台風の日はもっともっと気を付けて、というかなるべく運転しないで下さい!